ホーチミン市にある従業員28名のデジタルAgencyは、わずか12か月で顧客数を22社から41社に増やし、売上は45%伸びました。経営陣は喜びましたが、決算を締めてみると、手元に残った利益は前年より少なくなっていました。売上の伸びに対してコスト管理が追いつかず、新規顧客が増えるたびに作業・工数・追加依頼は増えるのに、利益はそれに見合って増えなかったのです。

本ケーススタディでは、このAgencyが90日で「成長の罠」から抜け出した過程を紹介します。感覚に頼った見積りと形だけのタイムシート記録から、顧客別・プロジェクト別・リテイナー別に収益性を測定できるOdoo Sales – Project – Timesheetsのワークフローへ移行しました。
💡 核心となるインサイト:Agencyが苦しくなるのは、顧客が足りないからではありません。どの顧客が利益を生み、どの顧客がチームの工数を静かに消費しているのかが分からないからです。価格・工数・原価が同じシステムにあれば、顧客を受けるか、値上げするか、追加依頼を断るかを、勘ではなくデータで判断できます。
21% → 31%
Odoo導入90日後に粗利率が回復
90日
現状調査から、収益性ダッシュボードを備えた本格運用まで
41社
全顧客の収益性をプロジェクト別・リテイナー別に測定
PART 1
成長の罠:売上は伸びても現金は残らない
このAgencyの従業員は28名で、Account(4名)、Creative & Content(10名)、Performance/Media(8名)、Tech & Web(6名)の4チームで構成されています。12か月の拡大を経て、売上は45%増えた一方、粗利率は34%から21%に低下しました。経営陣は、急成長するAgencyの多くに共通する3つの罠を特定しました。
| 罠 | 現場での現れ方 | 利益率への影響 |
|---|---|---|
| 感覚頼みの見積り | Accountが経験や競合の価格を基に金額を見積もり、各タスクに実際に必要な工数を根拠にしていない | 人件費原価を下回る価格で契約しても、誰も気づかない |
| リテイナー内のスコープクリープ | 顧客から「ちょっとだけ直して」という依頼が続き、チームは断れず、追加工数も記録しない | 工数は増えるのに報酬は据え置きで、リテイナーが徐々に赤字化する |
| 顧客別の利益ではなく売上だけを見る | 月次レポートには総売上と総人件費しかなく、顧客別・プロジェクト別の損益がない | 声の大きい赤字顧客が優先され、利益を生む顧客が後回しになる |
PART 2
Odooによる解決策:見積りから納品まで利益率を守る
Sonixは単にソフトウェアを導入しただけではありません。最初の見積りから最終検収まで、Agency内の「お金の流れ」を再設計しました。連携する3つのアプリ、Odoo Sales、Odoo Project、Odoo Timesheetsを活用しています。
💰 標準工数と実原価に基づく見積り
ブランドアイデンティティ制作、SNSページ運用、広告運用、ランディングページ制作といった各サービスを、Odoo Salesでサービス商品として標準化し、役割ごとの想定工数を設定しました。Accountは、顧客に見積書を送る前に予想利益率を確認できます。
🛡️ リテイナーと追加依頼の管理
各リテイナーはProjectで固定の工数枠に紐づけられます。実績工数が警告しきい値に達すると、プロジェクトマネージャーに通知が届き、顧客のために黙って追加作業を抱え込むのではなく、覚書の交渉や追加分の請求を行えます。
📈 顧客別・プロジェクト別の収益性レポート
Timesheetsに記録された工数はプロジェクト原価に自動で反映され、受注の売上と照合されます。経営陣は、月末の集計を待たずに、プロジェクト・顧客・サービス種別ごとの損益をダッシュボードで確認できます。
PART 3
90日間の導入ロードマップ
移行期間中も41社の顧客への納品を止めるわけにはいかないため、業務への影響を避けるべく、プロジェクトを3つのフェーズに分けて進めました。
- 1〜30日目(診断と標準化):過去12か月のデータを精査し、どの顧客が黒字でどの顧客が赤字かを特定します。サービスカタログ、タスクごとの標準工数、職位別の人件費単価を標準化します。
- 31〜60日目(8社でパイロット運用):リテイナーと単発案件の両方を含む8社で、見積り→プロジェクト→タイムシートの流れを試行します。日次で工数を記録する習慣を定着させ、工数超過の警告しきい値を調整します。
- 61〜90日目(本稼働と価格見直し):従業員28名・顧客41社すべてに展開します。顧客別の収益性レポートを月次の経営会議に組み込み、赤字契約の価格見直しを開始します。
PART 4
成果:90日で利益率が回復
3か月の運用後、Odooのレポートから、主な「漏れ」がふさがれたことが確認できました。
| 指標 | 導入前 | Odoo導入90日後 |
|---|---|---|
| 平均粗利率 | 21%(前年の34%から低下) | 31%(人件費原価を管理下に) |
| 赤字の顧客/プロジェクト数 | 把握できていない | 9社を特定、うち6社は価格またはスコープを見直し済み |
| Non-billable工数の比率 | 38% | 22%(追加作業を記録して請求) |
| 見積書の作成にかかる時間 | 2営業日 | 4時間(標準化したサービステンプレートを使用) |
PART 5
利益を犠牲にせず成長するための教訓
このAgencyの歩みから、成長途上にあるサービス業は次の3つの教訓を得られます。
- 売上より先に利益を測る:新規顧客は契約金額だけでなく、予想利益率で評価しましょう。大型でも赤字の契約は、小さくても黒字の契約よりも速くAgencyを貧しくします。
- 「追加作業」を数字にする:追加の工数をすべて記録すれば、顧客との会話は意見ではなく事実に基づくものになり、追加作業を断ることも、費用を請求することもずっと容易になります。
- 赤字顧客の価格見直しや取引終了を恐れない:明確なデータがあれば、経営陣は値上げ、スコープの絞り込み、取引終了の根拠を持てます。そして、より価値のある顧客のためにリソースを空けられます。
Sonixの国際基準のOdoo導入サービスでは、手法や実践的なソリューションをさらに詳しくご紹介しています。
重要ポイント
| 主要項目 | 実務上の効果 |
|---|---|
| 標準工数に基づく見積り | 原価割れの契約を最初の段階で防ぎます。 |
| アラート付きのリテイナー工数枠 | スコープクリープを早期に発見し、コストを抱え込む前に覚書を交渉できます。 |
| 顧客別の収益性 | 実際の数字に基づいて、値上げ、継続、取引終了を判断できます。 |
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