Odoo ERP / Details

Odoo 20 正式リリース:AIエージェント、MCP、アップグレード前に知っておきたいこと

Posted by Nguyên Đặng

Odoo 20 が正式にリリースされました。2026年9月24日、ブリュッセルで開催された Odoo Experience 2026 の基調講演で、Odoo は新バージョンを発表するとともに、50を超えるアプリの変更点をまとめたリリースノートを公開しました。Sonix は先にロードマップのプレビュー記事で、Odoo が計画していた内容を紹介しました。正式版が出た今、本記事ではその内容を実際のリリースと照らし合わせます。どの機能が実際に提供されたのか、アップグレード時に何を計画に入れるべきか、導入を判断する前に企業が考えるべき点は何か、という流れでご紹介します。

情報源についてのお断り:Odoo はリリースノートを公式サイトで公開しています。本記事は、そのリリースノートを読み解いた複数の Odoo パートナーの分析記事、Odoo の紹介動画、GitHub の 20.0 ブランチをもとにまとめています。Sonix はまだ実際のお客様プロジェクトで Odoo 20 を稼働させていないため、評価にあたる部分は導入結果ではなく Sonix の見解であることを明記しています。

Odoo 20 正式リリース:AIエージェント、MCP、会計・製造・Webサイトの改善
Odoo 20 正式リリース:AIエージェント、MCP、会計・製造・Webサイトの改善

2026年9月24日
ブリュッセルの Odoo Experience で Odoo 20 をリリース
50+
公式リリースノートで変更が記載されたアプリ数
13
新しい業種別パッケージ。既存の約10パッケージも刷新

概要

Odoo 20 の注目ポイント

最も目立つ変更は、AIエージェントが提案するだけでなく、レコードの作成と更新までできるようになったことです。あわせて、外部のAIツールとの MCP 接続、すっきりしたアイコンと柔らかい配色の新しいデザイン、営業、在庫、製造、会計、Webサイト、POS にわたる多数の改善が加わりました。

大きく3つに整理できます。

  • 書き込み権限を持つAI:エージェントがレコードを作成・更新し、指示ファイル(PDFなど)を読み取り、スケジュール実行の自動化の中でも動作します。
  • MCP:Odoo のデータベースを外部のAIアシスタントに接続し、ユーザーのアクセス権の範囲内でデータの読み書きを行います。
  • コア部分の整理:アクセス権の簡素化、チャッターでの変更履歴の新しい扱い、勘定科目表の親勘定の追加などです。デモには現れませんが、バージョン17、18、19からアップグレードする際に最も影響が出る部分です。

AI

AIエージェント:アシスタントから実行役へ

Odoo 19 のAIは主に質問への回答や要約を担い、変更をシステムに反映する作業は人が行っていました。Odoo 20 では、エージェントがレコードを作成・更新でき、自動アクションやスケジュールアクションから呼び出すこともできます。

Odoo の紹介動画の例を挙げます。注文がメールで届きます。内容を再入力する代わりに、ユーザーはエージェントに一つの指示を出します。注文メールが届くたびに、受注を作成し、顧客に確認メールを送り、私が確認できるようにフラグを立てて、というものです。エージェントは実行する内容を説明し、以後はプロセスが自動で動きます。

AI分野でほかに知っておきたい改善点です。

  • ファイルのプレビュー中に内容について質問でき、ファイルをエージェントとのチャットに送れます。
  • 自動化の中で動くエージェントのチャット履歴が残り、エージェントがどう処理し、どこで失敗したかを確認できます。
  • ツール呼び出し回数の上限が設けられ、上限に達するとエージェントは続行前にユーザーへ確認します。
  • 「Topics」は「skills」に名称変更されました。エージェントの振る舞いを決める指示とツールのセットです。
  • 音声での依頼入力、およびAIプロバイダーを選ぶとモデルが自動選択される機能があります。
  • エージェントとの会話は、最後のメッセージから30日間保存されます。

AIの費用についての注意

リリースノートによると、Odoo 20 のすべてのAI機能は、Odoo のアプリ内課金(IAP)サービスで購入するクレジットが必要です。残高がなくなると、AIを使うためのクレジットが不足している旨のメッセージが表示されます。AIがサブスクリプションに含まれると説明する情報源もありますが、リリースノートを直接読んだ分析記事はいずれも、このクレジット要件を記録しています。エージェントを前提にした業務プロセスを組む前に、運用コストへの織り込みと、Odoo 公式サイトでの料金確認をお勧めします。

Sonix の見解:書き込み権限を持つエージェントは、プロジェクトの重心を権限設計とデータ品質に移します。エージェントの制限を意図的に設定し、データが整っていればうまく機能します。どちらかを怠ると、混乱をより速く生み出すだけです。

技術・連携

MCP:外部のAIツールを Odoo に接続

Odoo 20 では、Model Context Protocol(MCP)を通じて、データベースを外部のAIアシスタントに接続できます。Odoo によると、外部ツールは接続したユーザーのアクセス権の範囲内で ERP データを読み書きします。つまり、AIツールは、そのユーザーに許可されたものだけを見て、変更できます。

紹介動画では、データベースを一度接続すると、外部ツールが Odoo のデータ上で直接作業する様子が示されています。ロードマップで語られていた MCP が、実際の形になったものです。

技術チームにとって、有効化する前の最初の作業は権限の見直しです。接続に使うアカウントは、管理者ではなく、限定された権限のものにしてください。

営業 & CRM

営業と CRM:見積が速く、パイプラインがすっきり

  • 見積のセクションテンプレート:複数の明細行をまとめて保存して再利用でき、受注作成時に見積テンプレートを選択でき、どの見積もテンプレートとして保存できます。セクションごとの数量にも対応します。
  • 商品なしの受注明細:説明文から作成でき、必要な場面では商品選択を必須にする設定もあります。
  • 明細行で粗利率を直接編集でき、販売価格が再計算されます。行番号、見積への商品画像、税込・税抜の切り替えもあります。
  • 期間別の価格表(例:特定の曜日)、梱包単位ごとの価格ルール、1回限りの割引コードがあります。
  • 実際の入金額に基づくコミッションで、マネージャー向けのコミッションにも対応します。
  • Dun & Bradstreet のデータベースからのリード生成(Odoo は5億8,000万社以上と説明)で、セグメントと地域で絞り込めます。リリースノートによると、このデータソースは Clearbit に代わるものです。
  • 営業チーム間のパイプライン切り替えが可能で、新しいリードは表示中のパイプラインに入ります。

サプライチェーン & 製造

購買、在庫、製造:商社・製造業にとって最も変更が多い領域

在庫と購買

  • 再発注ルールの最小・最大在庫水準を、需要履歴、希望する在庫日数、発注頻度から算出して提案します。
  • 過去の発注に基づくサプライヤーの品質評価と、再交渉すべきサプライヤーを指摘するAIエージェントがあります(いずれも公式動画で紹介)。
  • 入荷待ちの顧客注文を一覧できる引当レポートがあり、ワンクリックで引当できます。
  • 過去の特定時点の在庫表示、在庫の滞留期間レポート、商品ごとの輸入付帯費用(ランデッドコスト)、納品後にコストが変わった場合の売上原価の遡及更新に対応します。
  • 陸上輸送向けの CMR 書類を、納品伝票から自動入力して作成できます。
  • 会社間フローが改善され、ある会社が別の会社の倉庫から補充を受け、評価額も正しく移転されます。

製造(MRP)

  • 連続生産(Continuous Production):作業指示に直接生産数量を登録でき、数量の一部が完成した時点で次の工程が開始可能になります。製造オーダー全体を閉じる必要はありません。
  • 週ごとにグループ化した製造オーダーのカンバンで、部品の状況、稼働中の作業センター、納期、残り時間が表示されます。
  • 作業指示用の新しいカンバンとガントビューで、ドラッグ&ドロップによる計画と、従業員別の表示に対応します。
  • BoM の比較、BoM 上での追加コスト入力、進行中オーダーの分割、確定済みまたは取消済みオーダーの下書きへの戻しができます。
  • 製造オーダーの原価は、進行中は暫定値、クローズ後は実績値になります。「Produce」ボタンも従来の2つから1つになりました。

会計 & 人事

会計と給与計算

会計

  • 会計AIエージェント:売掛金、粗利益、キャッシュフローについて質問すると、レポートから数値が返ってきます。動画では、銀行照合の疑わしいエラーを監査し、推奨事項を提示する場面もあります。
  • Odoo から請求書を支払う:請求書を選んで支払いをクリックし、銀行で承認します。個別でも一括でも可能です。利用可否は銀行と国によって異なるため、お客様に約束する前に、ご自身の市場で動作するか確認してください。
  • 履歴に基づく請求書明細の予測、2段階の警告による重複検出、二重支払いの防止があります。
  • 顧客への支払督促を手動または自動で行え、ワークフローも簡素化されました。
  • 会社間取引:子会社が請求書を発行し、親会社が入金を受けた場合、Odoo が自動で消込を行います。
  • 銀行取引の一括操作、および一括での下書きへの戻しができます。

給与計算

  • 手取りから総コストを試算するネットからグロスへのシミュレーションと、確定前にテスト用の給与計算を実行して給与明細を印刷できる機能があります。
  • 設定上の警告に焦点を当てたダッシュボード、割合または固定額による昇給(インデクセーション)、1日あたりの時間で定義する勤務スケジュールがあります。
  • 給与明細を通じて精算される経費は、給与計算に自動で反映されます。

仕事の進め方に影響する変更が2点あります。銀行口座に関わるすべての仕訳は、銀行取引を起点にする必要があること。そして、独立した従業員経費(Employee Expenses)メニューが廃止され、会計のフローに統合されたことです。給与計算では、work entries と Planning から Payroll への連携が削除され、work entry type は time off type と統合されました。

Webサイト・POS・現場業務

Webサイト、eコマース、POS、現場業務

  • 指示文で作るWebサイト:AIアシスタントがページ、フォーム、メニュー、インタラクティブなブロックを作成し、文章のリライト、翻訳、SEOタイトルと説明文の提案を行います。ショップでは、AIが商品名、価格、説明文を編集し、画像を生成します。
  • AI検索への対応:Webサイト設定から llms.txt を生成でき、構造化データがデフォルトで追加され、サイトマップが整理され、モバイル向けのレスポンシブ画像に対応します。
  • eコマース:ポータルからの顧客による返品、最小注文数量、希望配送日、送料無料までの進捗バー、数値属性の範囲フィルター、在庫連動の公開、関連商品の自動表示があります。価格表ごとの税込・税抜表示により、1つのWebサイトで B2C と B2B の顧客に対応できます。
  • オフラインモード:接続がなくてもレコードの閲覧、作成、編集ができ、オンラインに戻ると変更が自動で同期されます。サービス担当者や現場作業にとっては、実質的な変化です。
  • Planning に統合された Field Service:移動時間を自動計算し、チームの現在地を地図上に表示します。
  • POS:新しいダッシュボード、刷新されたフロアプランエディター、売り切れ商品の一時非表示、セルフオーダーからのメモをキッチン画面に表示、1回の会計での複数通貨、サービス料に対応します。
  • Odoo Phone、Discuss、Marketing Automation:電話番号を Odoo 内で直接購入し、ドラッグ&ドロップで通話メニューを作成し、録音と文字起こしを取得し、時間帯、地域、チームで通話をルーティングできます。Marketing Automation は、ゼロから、テンプレートから、またはAIに頼んでキャンペーンを作成でき、イベント、日付、Webhook、オンデマンド実行をトリガーにできます。
  • タイムシート:新しいウィジェットとAIアシスタントが、デバイス上の活動を記録する ActivityWatch 連携をもとに、入力漏れを防ぎます。Odoo は、このデータはプライベートに保たれると説明しています。

業種別ソリューション

業種別パッケージ

Odoo 20 では、機械・工具のレンタル、ケータリング、ワイナリー、公共機関、個別設計型製造(エンジニアリング・トゥ・オーダー)を含む13の新しい業種別パッケージが追加されました。ホテル、不動産デベロッパー、不動産管理を含む既存の約10パッケージも刷新されています。

リリース前に言及されていた「約20の業種版」と比べると、実際は13の新規パッケージに加え、既存の一部がアップグレードされた形です。これらの業種の企業は注目しておくとよいでしょう。業種別パッケージは、ゼロからカスタマイズするより導入期間を短縮できる可能性があるためです。

アップグレード

Odoo 20 へアップグレードする際の注意点

Odoo 20 の多くの変更は、カスタムモジュールやレポートが依存している仕組みを削除または作り直すものです。既存の環境では、これがアップグレードの作業範囲を決めます。

変更内容影響を受けるもの
レコードルールを廃止し、アクセス権に直接ドメインを設定独自の権限を定義するすべてのカスタムモジュール
tracking values を廃止し、チャッターのメッセージを都度生成項目の変更履歴を読むレポートとモジュール(従来の仕組みを復元するモジュールあり)
勘定グループを親勘定に置き換え、勘定コードは任意に勘定科目表の構造と会計レポート
支払ステータス:「In Process」が「Paid」に、「Paid」が「Reconciled」に変更支払ステータスを読むフィルター、レポート、連携
Font Awesome アイコンを Material Symbols に置き換え独自UIを持つモジュール
プッシュ通知を Firebase から Odoo 独自のツールへ移行モバイル連携
削除:返品ウィザード、BoM の flexible consumption 設定、独立した Employee Expenses メニュー、Mondial Relay モジュール業務プロセスとユーザー教育

上の表に加えて、アップグレード前に確認したい項目が5つあります。

  • ローカライゼーション:リリースノートには国別のローカライゼーション変更が記載されています。Sonix が確認した情報源では、ベトナム向けの個別の記載は見つかりませんでした。そのため、電子インボイス、税務レポート、銀行フォーマットは、データのコピーでテストしてください。日本向けの商習慣や帳票についても、同様にテスト環境で確認することをお勧めします。
  • AIの費用:どの業務にエージェントを使う価値があるかを決め、クレジットの使用量を見積もってください。
  • 給与計算と経費:work entries の廃止と従業員経費の位置づけの変更により、現在の運用が変わる可能性があります。
  • 銀行関連のルール:銀行取引を伴わない、銀行口座への手動仕訳はできなくなりました。
  • カスタムモジュールとホスティング:すべてのカスタムモジュールおよびサードパーティ製モジュールの移行とテストが必要です。自社ホスティングの場合、20.0 のソースコードは Python 3.12〜3.14 と PostgreSQL 16 以降を必要とします。

サポート方針についてもう一点。Odoo は直近3つのメジャーバージョンをサポートします。Odoo 20 のリリースにより、バージョン17はサポート対象外となりました。バージョン16以前は、すでにサポート対象外です。

ロードマップ

すぐにアップグレードすべきか

答えは、現在の状況によって異なります。

  • 今から新規導入を始める場合:Odoo 20 で開始するとよいでしょう。リリース直後の数週間は不具合修正の期間です。1か月以内の本番稼働を予定している場合は、アップデートに備えた余裕を持たせてください。
  • 現在 Odoo 19 の場合:急ぐ必要はありません。サポートは継続されます。自動化でのAIエージェントや連続生産など、具体的なメリットのある新機能が出たときにアップグレードを計画してください。
  • 現在 Odoo 17 または 18 の場合:1年以内のアップグレードを計画してください。バージョン17はサポートが終了したばかりで、バージョン18は次のリリースでサポート対象外になります。
  • 現在 Odoo 16 以前の場合:アップグレードは単なる更新ではなく、プロジェクトです。Odoo 20 が標準機能で一部を代替するため、どのカスタムモジュールがまだ必要かの見直しとあわせて進めてください。

最も安全な進め方は変わりません。まずデータベースのコピーでアップグレードし、主要ユーザーと実際の業務プロセスをテストし、そのあとで本番環境に移行します。新しいメジャーバージョンは、バージョン番号を変えるだけでなく、業務プロセスを整理する良い機会でもあります。

Odoo 20
Odoo AIエージェント
MCP
Odoo アップグレード
Sonix Vietnam

Odoo 20 へのアップグレードをご検討中ですか?

Sonix は、カスタムモジュールの確認、アップグレード工数の見積り、現在のシステムで最初に活用する価値のある新機能の選定をお手伝いします。

💬 現在どのバージョンの Odoo をお使いですか?

コメント欄にご質問をお寄せください。Sonix がご連絡いたします。

Sonix – Your success is our happiness.

コメントを残す